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その日、俺はひどい風邪を引いて寝込んでいた。
 体温計が壊れているので計っていないが、熱は相当高い。頭の下には水枕、上には氷嚢があるけどあまり効果は
なさそうだ。それどころかカップラーメンができそうなほど水が茹っていた。
 母さんの持ってきたおかゆを食べる気力もなくベッドにただ転がっていると、透明な飾りだなの上においてある金魚鉢
が目に入った。
 金魚一匹しかいないけど、水が光をきらきらと反射して綺麗だった。



 それを眺めているうちに眠ってしまったらしい。お昼を少し過ぎた頃、俺は部屋の窓をコンコンと叩く音で目を覚ました。
 こんこん、こんこん………
 …………おかしい。といつもよりも余計に回らない頭で考えた。
 俺の家は普通の住宅街にある普通の二階建て。そして俺が今寝ている自分の部屋はその二階部分に当たる。
 そう考えて俺は凍りついた。
 二階にある部屋の窓を叩く者。もしかして………ロミオ?そしてジュリエットは、俺。
 こんこん!こんこん!
 いや、そういう冗談を言っている場合ではない。心なしか叩く力が大きくなっている。
「か、カラスだよな……きっと俺とお友達になりたくて………こうやって心のドアを叩いているんだ……」
 自分なりの解釈を口にして、俺は頭痛のする頭を押さえて、フラフラと千鳥足で机の横にある窓に向かった。
 母さんを呼ぶという案もあったけど、却下。こんな事くらいで高校一年生が親を頼ってはいけない。
 顔を背けたままシャッとカーテンを開ける。そして恐る恐る窓を見た。
 ――――――――――何もいない。
 拍子抜けして、もともと無い気力がさらに抜けた。あの音は単なる空耳だったのだろうか。
「はぁ…………早く熱下がんね―かな……」
 それでも、起き上がってカーテンを開けたついでとばかりに、俺は窓も開けた。
「うわっ……」
 そのとたん、ぶわっと風が俺の部屋めがけて吹き込んできた。おいおい、今頃春一番か!?それとも台風!!?
 あ、でも空は晴れてる。じゃあやっぱ春一番か。・・・・・もうすぐ秋だけど。
 なんてことを一瞬のうちに考えた。風に当たって脳が少し活発になったようだ。
「もっと早く開けてよ。集中力途切れちゃったじゃん」
 ……………………………………………は?
「窓、粉砕しようと風集めてるときに開けるんだもん。あーあ、あのミニ台風久しぶりに上手く出来た奴なのに」
 なんですと!?
 ぱっと目を見開いて、その声の主を探す。というか探すまでもなかった。
 まるで初めからそこにいたように、一人の女の子が俺の机の上に座っていたのだ。


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