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小春日和の再会劇



人生は、いつなにが起こるかわからない。



 ということを考える暇もないくらい、俺は今、ものすっごいピンチの中にいたりする。

「た、たすけ・・・・て」

 頭は真っ白。心臓は絶えず激しく振動し、逆に腹はひやりと冷え切っている。そして腕がぶるぶる震え、
足は宙に浮いたままだ。足が地に付かないというのはなんとも不安な事だと、今、秒単位で実感している
ところである。

 別にぶら下がり健康器にぶら下がっているわけではない。ちなみに昔買った我が家のそれは、倉庫で
埃を被っている。ああでも、アレは背骨の矯正にいいんだよな。

 ではなく。具体的に今の状況を話すと、崖から落ちかけているところである。

 ・・・・・それだけではよく分からないので、もうちょっと詳しく説明すると、今日は学校の遠足なのでハイ
キングで有名な山に来た。張り切っている引率教師を余所に、級友と喋りながらぶらぶら山を登っている
と野生の猿を発見。 あまりにも近くに現れた猿に興奮して、ついでに捕まえてみようと追いかけているう
ちに(※野生動物の捕獲は禁止されています)ハイキングコースを無視して山に分け入り、そのうちに級
友たちともはぐれてしまった。

 そして、歩き疲れてたまたま腰掛けた倒木が腐っていたため、後ろ向きに倒れそのままごろごろと坂を
転がり落ち、岩肌剥き出しの崖に放りだされ、かろうじて崖際から枝をせり出していた古木を引っつかみ、
足下30メートルはあろうかという空中に止まっているわけである。

 果たしてどの辺りが人生のターニングポイントになってしまったのか、遠足のオヤツをあげるから誰か教
えて欲しい。

 とか思い返してしまうとなんだか走馬灯のようだ。やばい、泣きそう。

 とりあえずポジティブにこの状況から抜け出す方法を考えてみよう。俺が全体重をかけてもびくともしない
ところをみると、今掴んでいる古木は幹も枝も根もしっかりしているようだ。とりあえず、この命綱はしばらく
大丈夫だろう。

 が、枝よりもかなり深刻な問題があった。ぶら下がって5分も経っていないのに、腕はもう限界を訴えてい
るのだ。

 格闘漫画の主人公でもあるまいし、ぶら下がって何時間も耐えるような訓練は受けていない。このままで
は遠からず手が枝から離れて、下へまっさかさまだ。 ・・・・・・・下を見るのはやめ。頭がくらくらするし。

「ってもなあ・・・・」

 両腕で体重はこれ以上支えられない。なんとか腕に力が入るうちに、懸垂の要領で枝に乗れないだろうか。
 それなら、助けが来るまでどうにでもなる。

「ふんっ」

 気合一発、伸びきった腕の筋を叱咤して、曲げる。そのまま体を上に―――お、火事場の馬鹿力ってすげ
え、もうちょっとで足を枝にかけられ・・・・



「わっ!!!」

「っっ!!?」

 後ろから、突然大声が聞こえてきた。そして、同時にどんっと背中を押される。よく友達同士でやる、相手を
驚かせるアレだ。人がいるとは思わなかった俺は、本気で驚き跳び上がったその瞬間、唯一の生命線である
両腕から力が抜け、考える間もなく枝から手が離れた。

 手が離れるイコール・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ちる。

「っうわああああああああああああああああっっっ!!!」

 ジェットコースターとは比較にならない、胃が回転するような落下感。みるみる小さくなる古木を見ながら、思
ったよりも冷静な頭が、口から出る悲鳴とは別に叫んだ。


 誰だ、あんな状況でふざける奴はあぁぁああぁ!!!!

 








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